何もできないままお昼になってしまいました。
無力感にさいなまれつつも、朝からまともに食事をしていなかった私はお弁当にかぶりつきました。
Tさん
美味しそうに食べるねぇ
州 ̄ 台  ̄;州
あ、すみません。お腹がすいてたもので・・・
Tさん
これも食べるかい?これは?
Tさんは、自分のお弁当の中から私にどんどんおかずを移していきます。
州 ̄ 台  ̄;州
いやいや、これじゃTさん食べるの無くなっちゃうじゃないですか。
Tさん
いーんだよ、いーんだ。せっかく遠くから来てくれたんだから。
顔をくしゃくしゃにしたTさんは本当に人が良さそう。
と言うか、人と人とが触れ合う“ぬくもり”を感じます。
首都圏でも私の周りは比較的人情味の厚いグループではありますが、それでもこちらの人間関係に比べるとずっとドライです。
比較したことが無かったので、そんな風に考えたこともありませんでしたが。
Tさん
一人じゃ食べきれないから、これも持ってけ~。
家族いるんだろ?
Tさんは台所から袋に入った野菜も持ってきました。
まだ土もついたままで、新鮮そう。
州 ̄ 台  ̄州
いやいや、荷物になっちゃうから良いですよ~。
断ると、Tさんは明らかに落胆した表情になりました。
Tさん
やっぱり福島の野菜じゃダメか。
私ら、何も気にしないけど・・・。
州 ̄ 台  ̄州
・・・・・。
心の中を見透かされたようで、私は絶句しました。
正直、土のついた野菜を見て私はひるんでいたのでした。
同時に、先ほどの商店街で見た、魚の干物を思い出していました。
多分、その日の朝にとれたであろう魚がたくさん並べられていました。
いろいろなことを考えて、思わず私は魚たちをジッと見つめてしまいました。
そして、そんな私をジッと見ている魚屋さんのおばさんの視線に気がついて、急いで笑顔を返したのだけど、
おばさんは何も言わずにどこかに行ってしまったのでした。
ここは福島第一原発から数十キロ圏内。
おそらく、あのおばさんもTさんと同じことを考えたのでしょう。
ごめん。
ごめんね。
Tさん
○○も遊びに来ないかな・・・
○○さんが息子さんの名前であることは直ぐ察しがつきました。
Tさん
震災で本当に心細かったのに、○○は直ぐには来てくれなかった。
自分の家族があるんだからしょうがない。
小さい子どももいるしね。
(2人目の子どもが産まれたばかり)
やっと孫の顔を見れたのは、ここに越してからだよ。
なのに・・・
州 ̄ 台  ̄州
なのに?
お嫁さんは、降りたがる下の子を抱っこひもからおろすことは決してしませんでした。
(下のお子さんはハイハイ時期)
上の子も、何かを言い聞かせられていたのか、Tさんが差し出すお菓子もジュースも、お水すらも決して口にすることがなかったそうです。
そうして数十分もしないうちに、そそくさと帰ってしまったと。
まだ玄関を出て間もない車の中で、お嫁さんとお孫さんがあわててマスクをつけるのを見てしまったと、Tさんは言いました。
Tさん
あたしら、何も悪いことしてないのに、まるでバイキン扱いだ。
州┯ 台 ┯州
うっ・・・
Tさんの辛さは良く分かる。
でも私は、幼い子供を守ろうとするお嫁さんの気持ちも、痛いほど分かる。
何をどう言ったら良いのか。
私はまたしても無力感にさいなまれつつ、涙をぽろぽろとこぼすTさんの話に耳を傾けていました。
会話の閉塞感を打ち破ってくれたのは、私をここに連れてきてくれた知り合いでした。
知り合い
Tさん、それはしょうがないよ。
お嫁さんはちっちゃい子(孫)を守らなきゃいけない。
お嫁さんが悪いんじゃない。
言いたいことをズバズバ言えるのは、それだけTさんと親しいからでしょう。
Tさん
分かってるって・・
頭で理解できるのと、心で受け止めるのとでは違う。
きっとTさんはそう言いたかったに違いありません。
知り合いは、年配の人ほど放射能の怖さを理解しようとしないこと、
連帯意識なのか、遠くに避難する人たちを悪く言う傾向があること、
原発があるが故の恩恵も、えげつないお金の話まで私に教えてくれました。
現地の人たちの苦渋が痛いほど伝わってきて、よそ者の私がここにポンと来たことが申し訳なくすら思えました。
それでもね、
知り合いは私の居心地の悪さを察してか、言葉を続けました。
知り合い
福島が好き。
私たちがもう一度、美しい福島を取り戻していかなきゃ。
うん、うんとうなづくTさんの顔が急に力を得たように見えて、私まで一緒に涙ぐむのでありました。
──続く。
実は、連載はここからが本題なのです。^^;
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